2011年12月15日木曜日

九変篇・利害は一体

_そこで、知恵のある者は深く考えて、必ず利害を集める。
 利益になる考えを集めて、その欠点をあかす。
 損害になる考えを集めて、その心配な点の解決策をしめ
す。
 だから、人々を勢いよく立ち上がらせるのには損害を話
し、人々に役割をあたえるのには報いることを話し、人々
をうながすのには利益を話す。

 このことから、戦争をする手順は、向こうから来ないこと
を期待するのではなく、こちらの持てる力で待機しているこ
とに期待する。
 向こうから攻めてこないことを期待するのではなく、こちら
の攻めてきても無駄になることに期待をする。

※どんなに知恵のある者でも利益だけを得て、損害をなく
すということはできない。それは、利益と損害、成功と失敗
はコインの裏表の関係にあるからだ。
 損害や失敗を恐れていては利益や成功を得ることはでき
ない。
 利益や成功に喜んでいては、必ず損害や失敗をする。
 そこで、知恵のない者はどうすればいいか?
 ありとあらゆる案をしぼりだし、その優先順位を決めて、
すべてやってみる。
 優先順位の決め方によっては、利益や成功は最後になる
かもしれないが、確実にたどりつくことができる。
 実行した結果によって、新しい案が出たり、優先順位を見
直せば、より早く利益や成功に近づく。
 利益や成功を得ても、そこで終わりではなく、利益が増え
すぎたら、成功しすぎたら周りにどんな悪影響があるかを考
える。
 利益だけを追求すれば公害になるし、刃物で料理ができ
るが人殺しもできる。
 自然現象(人為的なことも)はどんなことが起きるか分から
ない。すべてのことに対応はできないが、なにも起こらないと
考えるお役所仕事では命がいくつあってもたりない。
 過去の歴史や他国で起きたことなどの情報を集め、それを
シミュレーションしてゲームのように体験して対応方法を考え
ておくことはできる。
 これが九変の術といえなくもない。


このゆえに智者の慮は必ず利害に雑(まじ)う。
利に雑えて務め信ぶべきなり。
害に雑えて患(うれ)い解くべきなり。
このゆえに諸侯を屈するものは害をもってし、諸侯を役す
るものは業をもってし、諸侯を趨(はし)らすものは利をもっ
てす。

ゆえに兵を用うるの法は、その来たらざるを恃(たの)むな
く、われのもって待つあるを恃むなり。
その攻めざるを恃むなく、われの攻むべからざるところある
を恃むなり。

是故智者之慮、必雜於利害
雜於利、而務可信也
雜於害、而患可解也
是故屈諸侯者以害、役諸侯者以業、趨諸侯者以利

故用兵之法、無恃其不來、恃吾有以待也
無恃其不攻、恃吾有所不可攻也