2011年5月28日土曜日

計篇・相手をかく乱する

 戦争は相手をかく乱することだ。
 だからバカなフリをしたり、役立たずに見せかけたり、
まだ動かないと見せて、すぐに行動したり、餌で誘った
り、相手に考えさせず、普通にして悟られず、引き際を
わきまえ、相手を怒らせたり、優越感を与えたり、楽し
ませて安心させ、信用を得て、こちらの意のままに動か
す。
 こうすることで相手を無防備にさせ、その隙をつく。
 これはルールがあるわけではなく、何をどう使うかは
状況による。

 普段は静かで、人に恵みを与えてくれる海が、津波と
なり、多くの人命を奪うのは、この理屈にかなっている。

※この文章も一般的には「戦争はだましあいである」と
解釈されているが、信用がなくなり、敵を増やすだけで、
大義名分も得られない。
 ちゃかして相手のペースを狂わせる。または味方のフ
リをして足を引っ張る程度と考えたほうがいい。


兵とは詭道(きどう)なり
ゆえに能(のう)なるもこれに不能を示し、用なるもこれ
に不用を示し、近くともこれに遠きを示し、遠くともこれ
に近きを示し、利にしてこれを誘い、乱にしてこれを取
り、実にしてこれに備え、強にしてこれを避け、怒(ど)
にしてこれを撓(みだ)し、卑(ひ)にしてこれを驕(おご)
らせ、佚(いつ)にしてこれを労し、親にしてこれを離す
その無備を攻め、その不意に出(い)ず
これ兵家の勢、先には伝うべからざるなり

兵者詭道也
故能而示之不能、用而示之不用、近而示之遠、
遠而示之近、利而誘之、亂而取之、實而備之、
強而避之、怒而撓之、卑而驕之、佚而勞之、
親而離之
攻其無備、出其不意
此兵家之勢、不可先傳也

2011年5月21日土曜日

計篇・武器とは

 武器とは、
 1.大義名分を得ること
 2.指導力
 3.行動するタイミング
 4.活動を邪魔しないルール
 5.適材適所
 6.学習能力
 7.決断力

 これらがあれば憂いはない。
 武器を使えば勝てる。
 武器を持っていなければ負ける。
 武器を持っていても使わなければ、力を発揮できない。
 武器を有効に活用することで、5つの備えが生きてくる。

※この文章は一般的には下記のように自分と相手の比
較により勝敗を予測するといった解釈をしている。

 1.君主はどちらが民心を掌握できる賢明さを備えてい
   るか
 2.将軍の能力はどちらが優れているか
 3.天地がもたらす利点はどちらにあるか
 4.軍法や命令はどちらが徹底しているか
 5.兵力はどちらが強大か
 6.兵士はどちらが軍事訓練に習熟しているか
 7.賞罰はどちらが明確に実行されているか

 しかし、自分のほうに不備があり弱いからといって、戦
いを回避できるとはかぎらない。
 敵は、これらを知ったうえで、弱いところをついてくるか
らだ。
 弱者が強者に勝つには、弱者にも使える武器を持つこ
とが重要だ。
 どんなに強力な武器があっても使えなければ意味がな
い。


曰く、主いずれか有道なる、将いずれか有能なる、天地
いずれか得たる、法令いずれか行なわる、兵衆いずれか
強き、士卒いずれか練(なら)いたる、賞罰いずれか明ら
かなると
われこれをもって勝負を知る
将、わが計を聴くときは、これを用うれば必ず勝つ、これ
を留めん
将、わが計を聴かざるときは、これを用うれば必ず敗る、
これを去らん
計、利としてもって聴かるれば、すなわちこれが勢をなし
て、もってその外を佐(たす)く
勢とは。利によりて権を制するなり

曰主孰有道、將孰有能、天地孰得、法令孰行、
兵衆孰強、士卒孰練、賞罰孰明
吾以此知勝負矣
將聽吾計、用之必勝、留之
將不聽吾計、用之必敗、去之
計利以聽、乃爲之勢、以佐其外
勢者因利而制權也

2011年5月14日土曜日

計篇・5つの備え

 道とは、政治が民意を反映しているか。
 天とは、バランスを保ち、公平であるか。
 地とは、事態の把握が正しくされているか。
 将とは、実行する者に素質、信用があるか。
 法とは、ルールを作る能力があるか。
(民意を反映した政策により、事態に対応した法律を整
備し、公平に運用する。それには信用のおける者があ
たる必要がある)

 この5つの備えを理解している者が勝ち、理解してい
ないものが負ける。だからこの備えを整えるために武器
を使う。そして不備を見つけ、強化しなければ戦えない。


道とは、民をして上(かみ)と意を同じくし、これと死すべ
くこれと生くべくして、危きを畏(おそ)れざるなり
天とは、陰陽・寒暑・時制なり
地とは遠近・険易・広狭・死生なり
将とは、智・信・仁・勇・厳なり
法とは、曲制・官道・主用なり
およそこの五者は、将は聞かざることなきも、これを知る
者は勝ち、知らざる者は勝たず
ゆえにこれを校(くら)ぶるに計をもってして、その情を索
(もと)む

道者令民與上同意也、故可以與之死、可以與之生、
而不畏危
天者陰陽寒暑時制也
地者遠近險易廣狹死生也
將者智信仁勇嚴也
法者曲制官道主用也
凡此五者、將莫不聞、知之者勝、不知者不勝
故校之以計、而索其情

2011年5月7日土曜日

計篇・戦争は国の存亡

 戦争は国の存亡にかかわる外交手段であり、使えば
致命的な損害がでる。しかし、生きるために避けること
ができないこともある。

 自分たちから起こす戦争には、よほどの大義名分が
必要で、かりに大義名分があったとしても犯罪にかわり
はない。
 大震災のように避けることができない、国の存亡にか
かわる事態も戦争と同じだ。

 だから戦争に対処するには5つの備えが必要であり、
実行するには有効な武器が必要だ。

 5つの備えとは、1に道、2に天、3に地、4に将、5に
法だ。


孫子曰(いわ)く、兵とは国の大事なり、死生の地、
存亡の道、察せざるべからざるなり
ゆえにこれを経(はか)るに五事をもってし、これを
校(くら)ぶるに計をもってして、その情を索(もと)む
一に曰く道(みち)、二に曰く天、三に曰く地、四に曰
く将、五に曰く法なり

孫子曰、兵者國之大事、死生之地、存亡之道、
不可不察也
故經之以五事、校之以計、而索其情
一曰道、二曰天、三曰地、四曰將、五曰法