2012年6月9日土曜日

用間篇・亡国にしないために

_もし、軍隊が攻撃したいと思い、城攻めをしたいと思い、暗殺し
たいと思った時、必ず、それを守っている将軍、補佐役、これら
に面会する者、門番、警備する者の姓名を調べ、「間」には必ず、
これらの者の知り合いにさせる。

 敵国の人が来ていたら、その中から「間」になりそうな者を探し
出し、その人を厚遇して、味方になるように説得する。
 だから、「反間」を得るには、登用による。
 これで、姓名を調べることができる。
 そこで、これらの者たちと同じ出身地の「郷間」「内間」を得て、
接触させる。
 これで、知り合いになる。
 そうしておいて、「死間」が民衆を煽動して、敵国に嘘の情報が
報告されるようにする。
 これで、敵国の反応を知ることができる。
 後は、「生間」が喋りまわることで、真に受けさせ、機会をうかが
う。
 これら、5つの「間」の行動は、君主が必ず知っておかなければ
ならない。
 こうした敵国の内情は、必ず「反間」がいてこそなのだ。
 だから、「反間」はもっとも厚遇しなければいけない。

 その昔、殷(いん)が栄えたのは、伊摯(いし)という者が、敵国
の夏にいたからだ。
 周が栄えたのも、呂牙(りょが、太公望のこと)という者が、敵国
の殷にいたからだ。
 このように、名のある君主や賢い将軍だけが、優れた知恵によ
り、「間」になった者の力を借りて、必ず大成功を成し遂げるのだ。
 これが、戦争の必須条件で、全軍がこの助けにより、行動でき
るのだ。

※ようするに、敵国の中に不満のある者がいて、こちらに味方す
る。それが賢者なら、ほっといても滅んでいくような国だろう。
 もちろん、自国に、敵国の味方になるような賢者がいたら、やが
ては滅びることになる。
 今の日本でいえば、海外への頭脳流出や企業の海外逃避がこのま
ま続けば、外敵の心配をする必要はなく、ほっといても自滅する。
 孫子(孫武)が言いたいのは、「たとえ戦争で勝利しても、政治が
悪ければ、いずれ滅びる。戦争しなくても、政治が善ければ、天下
はその国に帰順する」ということだ。
 誰にでも欠点はある。その欠点を自分で見つけて直すことがで
きればいいが、できない時は、誰かに指摘してもらい反省して直
すしかない。
 誰でも自分の失敗を認め、反省するのは難しい。
 どんな境遇にあってもプライドがあり、被害者意識が強いものだ。
 だからこそ、外部の者を受け入れ、小言に耳をかたむけ、素直
に反省できる者が大成する。
 今の日本の政治が悪いのは、政治家や公務員が悪いだけでは
ない。
 過去の歴史で、国が滅び、時代が変わったのは、国民が代表を
選んで公務員に仕事を任せた結果だ。
 無神経に「イカサマ選挙」に行って投票し、それで政治参加して
いるような気になって、面倒なことは公務員に押しつけて知らん顔
をしている。そんな国民こそが加害者なのだ。
 これを反省し、国民全員で政治をしなければ、政治は絶対に善
くならない。
 私は選挙で「該当者なし」を選択できるようにすればいいと思っ
ているが、法律を作っているのがイカサマ選挙で選ばれた者では、
絶対無理だろう。
 そこで、「民意反映党」というのを結党してはどうかと思う。
「民意反映党」には主義主張はなく、社会問題に対して、国民か
ら問題解決の提案や意見を集めて、それに優先順位を決めて、政
策に活かす。
 簡単に言えば国民投票をしたり、データ集計をする組織を政党
にしたものだ。
 多数決ではなく優先順位を決めることで、少数意見も活かされ
る。これは、ムダが多くあるように感じるかもしれないが、確実
に問題解決ができるやり方だ。
 多数派工作をしても、一部の地域で社会実験をして、結果が悪
ければ次の提案が実行される。
 提案者や投票者の履歴が残り、どんな提案をしたか、どんな提
案に投票したかが分かり、実行された時はどういう結果になった
かも分かる。
 悪い結果になった場合、提案者は1年間、提案ができない。ま
た、その提案に投票した者は1年間、投票ができないといったペ
ナルティを与えれば、デタラメな提案や無神経な投票はなくなる。
 良い結果になった場合、社会の発展に貢献できるし、仕事など
でも有利な経歴となるだろう。
 これを何度も経験することで、より早く良い提案や意見を政策
に活かすことができるようになる。
 いずれこの政党だけになれば、真の国民参加の政治が実現する。

                         <完>


およそ軍の撃たんと欲するところ、城の攻めんと欲するところ、人
の殺さんと欲するところは、必ずまずその守将、左右、謁者(えっ
しゃ)、門者、舎人の姓名を知り、わが間をして必ずこれを索知せ
しむ。

必ず敵人の間の来たりて、われを間する者を索(もと)め、よりて
これを利し、導きてこれを舎す。
ゆえに反間は得て用うべきなり。
これによりてこれを知る。
ゆえに郷間、内間、得て使うべきなり。
これによりてこれを知る。
ゆえに死間、誑事(きょうじ)をなして敵に告げしむべし。
これによりてこれを知る。
ゆえに生間、期のごとくならしむべし。
五間の事、主、必ずこれを知る。
これを知るは必ず反間にあり。
ゆえに反間は厚くせざるベからざるなり。

昔、殷(いん)の興(おこ)るや、伊摯(いし)、夏にあり。
周の興るや、呂牙(りょが)、殷にあり。
ゆえにただ明君、賢将のみよく上智をもって間となす者にして、必
ず大功を成す。
これ兵の要にして、三軍の恃(たの)みて動くところなり。

凡軍之所欲撃、城之所欲攻、人之所欲殺、
必先知其守將左右謁者門者舍人之姓名、令吾間必索知之

必索敵人之間來間我者、因而利之、導而舍之
故反間可得而用也
因是而知之
故郷間内間可得而使也
因是而知之
故死間爲誑事、可使告敵
因是而知之
故生間可使如期
五間之事、主必知之
知之必在於反間
故反間不可不厚也

昔殷之興也、伊摯在夏
周之興也、呂牙在殷
故惟明君賢將、能以上智爲間者、必成大功
此兵之要、三軍之所恃而動也

2012年6月2日土曜日

用間篇・扱いにくい「間」

_こうした、情意を知る「間」を活かすのに5つある。
 それは、「因間」「内間」「反間」「死間」「生間」だ。
 5つの「間」は、一緒に派生し、それがどこから来たのか知るこ
とはできない。これを「神紀(しんき。神のみちすじ)」と言う。
 これらの人が君主の宝となる。
「因間」とは、在野にいる人の中から登用することだ。
「内間」とは、官職にある人の中から登用することだ。
「反間」とは、敵対する者の中から登用することだ。
「死間」とは、民衆を煽動する役割を担い、こちらの「間」がそれ
を実行して、敵の「間」がそれを真に受けて報告するようにするこ
とだ。
「生間」とは、帰郷して、よく喋る口の軽い者のことだ。

 全軍の中でも、「間」をかわいがり、褒賞は「間」に多くし、何事
も「間」に密かに話す。
 聖人並みの知恵者でなければ「間」を登用することはできない。
 慈愛と正義がない者は「間」を役立てることはできない。
 優れた者でなければ「間」の成果を得ることができない。
 細かく心配りをすれば「間」を登用できないところはない。
 ただし、「間」が存在していることが分かり、噂が広まれば、
「間」だと触回る者はもちろん、「間」を登用した者もみな死ぬこ
とになるだろう。

※隠れた賢者や役に立っていない者は、一般的に身分が低く、
扱いにくい。
 法律を無視することも平気な者だったら、命取りになるかもし
れない。だからこそ、活かすことができたらとてつもない力を発
揮する。
 こうした者たちに嘘は通用しない。
 命じるのではなく、目的に向かうことが利益につながることを
見せて、納得させなければ行動しない。
 自分の能力に気づいていない者もいるので、それを気づかせ
るだけの指導力も必要になってくる。
 凡人は、こうした者たちを見下しているので、特別扱いすると
不満をもつ。だから、目立たせないように、凡人の中に潜ませ
る。
 そこまでするだけの価値がある者たちを見つけ出すことだ。

 例えば犯罪者を悪者扱いして刑務所に閉じ込めているかぎり、
なんの役にも立たない。
 犯罪者は能力の使い方を間違っただけで、刑務所内に会社を設
け、能力を正しい方向に働かせるようにすればいい。
 そして、普通の会社と競争させて、高収益を上げる面白さを味
わえば、自分の本当の能力に目覚めるだろう。
 今の日本には終身刑がなく、欠陥のある法の名のもとに死刑と
いう殺人がおこなわれている。
 もちろん、終身刑があっても死刑にせざるおえないような犯罪
を犯した者がいるかもしれない。
 今の欠陥裁判では終身刑がないので、その判断すらできない。
 終身刑があれば、社会には二度と出ることはできないが、刑務
所の中に第二の社会をつくり、経済活動をさせて社会貢献させる
ほうが、罪の償いになるし、文化を発展させることもできるだろ
う。
 先に書いた生活保護費を電子マネーにしたことで生活保護者が
増えて働く人が減り、労働力が足らなくなった場合、こうした受
刑者を活用すれば、経済が停滞することはない。


ゆえに間を用うるに五あり。
因間あり、内間あり、反間あり、死間あり、生間あり。
五間ともに起こりて、その道を知ることなき、これを神紀(しんき)
と謂う。
人君の宝なり。
因間とはその郷人によりてこれを用うるなり。
内間とはその官人によりてこれを用うるなり。
反間とはその敵の間によりてこれを用うるなり。
死間とは誑事(きょうじ)を外になし、わが間をしてこれを知らしめ
て、敵の間に伝うるなり。
生間とは反(かえ)り報ずるなり。

ゆえに三軍の事、間より親しきはなく、賞は間より厚きはなく、事
は間より密なるはなし。
聖智にあらざれば間を用うることあたわず。
仁義にあらざれば間を使うことあたわず。
微妙にあらざれば間の実を得ることあたわず。
微なるかな微なるかな、間を用いざるところなきなり。
間事いまだ発せずしてまず聞こゆれば、間と告ぐるところの者と
は、みな死す。

故用間有五
有因間、有内間、有反間、有死間、有生間
五間倶起、莫知其道、是謂神紀
人君之寳也
因間者、因其郷人而用之
内間者、因其官人而用之
反間者、因其敵間而用之
死間者、爲誑事於外、令吾間知之、而傳於敵間也
生間者、反報也

故三軍之事、莫親於間、賞莫厚於間、事莫密於間
非聖智不能用間
非仁義不能使間
非微妙不能得間之實
微哉微哉、無所不用間也
間事未發而先聞者、間與所告者皆死