2011年9月17日土曜日

勢篇・勢いを増す

 そこで戦争に慣れた者は、勢いを得るために、人の言
動をとがめない。
 だから最適な人を選んで、勢いを増すように煽動させる。
 煽動する者は、人を戦いに駆り立てるために、動かな
い木や石が転がるのと同じように煽動していく。
 木や石の性質は、安定した場所では静止し、不安定な
場所では動き、地面に接していればいずれ停止し、宙に
浮いていればいつまでも進んで行く。
 だからうまく人を戦いに駆り立てた勢いは、宙に浮いた
石が険しい山でも転がって登るような勢いになる。

 ※弱者が強者に勝つためにはルール無用で挑まなけ
ればならない。そもそもルールは強者に有利なように作
られる。
 戦争でルールを作ってもテロリストなどはそのルールを
無視するし、ルールが必要な戦争などしなければいい。
 戦争とは人殺しが正当化される行為だ。
 ナチスのヒトラーは、攻めようとする国に自国民を住ま
わせ、迫害されているように宣伝した。それを見た国民
は怒りを増し、愛国心に訴えることで、誰もが武器を持っ
て戦うようにしむけた。
 カルト教団は、将来の不安を駆り立て、神を利用して
自分たちには超越した能力があるように錯覚させる。
 一時的に勢いが増したとしても、それが身勝手なもの
なら、必ず自分に災いをもたらす。


ゆえに善く戦う者は、これを勢に求めて、人に責(もと)め
ず。
ゆえによく人を択(す)てて勢に任ず。
勢に任ずる者は、その人を戦わしむるや、木石を転ずる
がごとし。
木石の性は、安なればすなわち静に、危なればすなわち
動き、方なればすなわち止まり、円なればすなわち行く。
ゆえに善く人を戦わしむるの勢い、円石を千仞(せんじん)
の山に転ずるがごときは、勢なり。

故善戰者、求之於勢、不責於人
故能擇人而任勢
任勢者、其戰人也、如轉木石
木石之性、安則靜、危則動、方則止、圓則行
故善戰人之勢、如轉圓石於千仞之山者、勢也