2011年9月10日土曜日

勢篇・勢いと時期

 激しい水の速さが石を漂わすのは、勢いがあるからだ。
 獲物を狙う鳥が疾風のごとく獲物を捕るのは、時期が
合っているからだ。
 これと同じように戦争に慣れた者は、民衆に危機的な
状況を訴えて勢いとし、時期を見計らって一気に動く。
 勢いは弓をひくように力をためなければならず、時期
は敵の変化をみて兆しを知る必要がある。

 多数が入り乱れ、戦いが混乱しても目的を見失っては
いけない。
 勝敗がつかず、こう着状態となっても気を緩めてはい
けない。

 治まっているものでも乱れ、勇敢なものでも怯えるし、
強いものでも弱い部分がある。
 治まったり乱れたりするのは謀略による。
 勇敢になったり怯えたりするのは勢いの差による。
 強くなったり弱くなるのは外見(体裁)による。

 だから敵を動かすことができる者は、こちらが外見を
変化させることで、敵がそれに合わせて行動するように
し、こちらが予測しやすい行動をすれば敵は必ず隙をつ
いてくる。
 有利だと思わせて動かし、伏兵で待っていればいい。

※ルアーを使った釣りをする場合、魚の種類や季節、天
候などによってルアーを選ぶ。そしてルアーを巧みに動
かして生きた餌のように見せかけて魚を誘い出し、釣針
にかかったタイミングを見て、ラインを一気に巻き上げる。
 釣り上げるまでには、ラインを巻いたり、止めたり、出
したりといった魚との駆け引きがあり、魚を弱らせる。
 目的の魚を釣りたいという根気と集中力がルアーを生
きた餌に見せかけることができ、竿の先やラインからくる
振動を感じてタイミングを知ることができる。
 目的の魚のいる場所を知ることや餌をまいておびき寄
せることも大事だ。


激水の疾(はや)くして石を漂わすに至るは、勢なり。
鷙鳥(しちょう)の疾くして毀折(きせつ)に至るは、節なり。
このゆえに善く戦う者は、その勢は険にしてその節は短
なり。
勢は弩(ど)をひくがごとく、節は機を発するがごとし。

紛紛紜紜(ふんぷんうんうん)として闘い乱れて、乱すべ
からず。
渾渾沌沌(こんこんとんとん)として形、円(まる)くして、
敗るべからず。

乱は治に生じ、怯(きょう)は勇に生じ、弱は彊(きょう)に
生ず。
治乱は数なり。
勇怯(ゆうきょう)は勢なり。
彊弱(きょうじゃく)は形なり。

ゆえに善く敵を動かす者は、これに形すれば敵必ずこれ
に従い、これに予(あた)うれば、敵必ずこれを取る。
利をもってこれを動かし、卒をもってこれを待つ。

激水之疾、至於漂石者、勢也
鷙鳥之疾、至於毀折者、節也
是故善戰者、其勢險、其節短
勢如ヒク弩、節如發機

紛紛紜紜、闘亂而不可亂也
渾渾沌沌、形圓而不可敗也

亂生於治、怯生於勇、弱生於彊
治亂數也
勇怯勢也
彊弱形也

故善動敵者、形之、敵必從之、予之、敵必取之
以利動之、以卒待之