戦争には、兵器や食糧などの調達、事前の工作に
膨大な費用がかかる。
長期戦や遠征になればなおさらで、兵士も疲労する。
城を攻めれば、損害は多く、その間、国の守りが手
薄になる。
こうした戦い方をしていると敵以外にもつけ入る隙を
与えてしまう。
そうなれば知恵がある者でも対処できなくなる。
だから戦争は短期戦が基本で、長期戦や遠征を避
ける。
長期戦で勝ったとしても利益はほとんどない。
こうした損失を踏まえておかなければ、ただの殺し
合いになるだけで、本来の目的を達成することはでき
ない。
※これは時代や国によって違う場合がある。
現在のように飛行機や弾道ミサイルによる空爆がで
きれば、城攻めはそんなに難しくない。
古代中国の城は都市を城壁で囲った城郭都市なの
で城攻めが難しかった。
日本では織田信長や豊臣秀吉が敵の城の側に城(砦)
を築く、「付城」で、遠征を避け、敵の動きを封じ、短期
戦を何度も繰り返すことで長期戦でも勝ち、天下統一
もできた。
徳川家康は戦いでは勝っても目的を達成することが
できず、子の秀忠や孫の家光の時代になってようやく
天下を掌握した。こうした長期戦もある。
この文章は「目先の利益に飛びつかず、その先の損
失も考えよ」といった解釈をしたほうがいい。
孫子曰く、およそ兵を用うるの法は、馳車(ちしゃ) 千
駟(せんし)、革車(かくしゃ)千乗、帯甲(たいこう)十
万、千里にして糧を饋(おく)るときは、すなわち内外
の費、賓客の用、膠漆(こうしつ)の材、車甲の奉(ほ
う)、日に千金を費して、しかるのちに十万の師、挙が
る。
その戦いを用(おこ)なうや久しければ、すなわち兵を
鈍(つか)らせ鋭を挫(くじ)く。
城を攻むればすなわち力屈き、久しく師を暴(さら)さ
ば、すなわち国用(こくよう)足らず。
それ兵を鈍(つか)らせ鋭を挫き、力を屈くし、貨を殫
(つ)くすときは、すなわち諸侯その弊に乗じて起こる。
智者ありといえども、そのあとを善くすることあたわず。
ゆえに兵は拙速なるを聞くも、いまだ巧の久しきを睹
(み)ざるなり。
それ兵久しくして国の利する者は、いまだこれあらざ
るなり。
ゆえにことごとく用兵の害を知らざる者は、すなわち
ことごとく用兵の利をも知ることあたわざるなり。
孫子曰、凡用兵之法、馳車千駟、革車千乘、
帶甲十萬、千里饋糧、則内外之費、賓客之用、
膠漆之材、車甲之奉、日費千金、
然後十萬之師舉矣
其用戰也、勝久則鈍兵挫鋭
攻城則力屈、久暴師則國用不足
夫鈍兵挫鋭、屈力殫貨、則諸侯乘其弊而起
雖有智者、不能善其後矣
故兵聞拙速、未睹巧之久也
夫兵久而國利者、未之有也
故不盡知用兵之害者、則不能盡知用兵之利也