2011年6月11日土曜日

作戦篇・長期戦

 戦争には、兵器や食糧などの調達、事前の工作に
膨大な費用がかかる。
 長期戦や遠征になればなおさらで、兵士も疲労する。
 城を攻めれば、損害は多く、その間、国の守りが手
薄になる。
 こうした戦い方をしていると敵以外にもつけ入る隙を
与えてしまう。
 そうなれば知恵がある者でも対処できなくなる。
 だから戦争は短期戦が基本で、長期戦や遠征を避
ける。
 長期戦で勝ったとしても利益はほとんどない。
 こうした損失を踏まえておかなければ、ただの殺し
合いになるだけで、本来の目的を達成することはでき
ない。

※これは時代や国によって違う場合がある。
 現在のように飛行機や弾道ミサイルによる空爆がで
きれば、城攻めはそんなに難しくない。
 古代中国の城は都市を城壁で囲った城郭都市なの
で城攻めが難しかった。
 日本では織田信長や豊臣秀吉が敵の城の側に城(砦)
を築く、「付城」で、遠征を避け、敵の動きを封じ、短期
戦を何度も繰り返すことで長期戦でも勝ち、天下統一
もできた。
 徳川家康は戦いでは勝っても目的を達成することが
できず、子の秀忠や孫の家光の時代になってようやく
天下を掌握した。こうした長期戦もある。
 この文章は「目先の利益に飛びつかず、その先の損
失も考えよ」といった解釈をしたほうがいい。


孫子曰く、およそ兵を用うるの法は、馳車(ちしゃ) 千
駟(せんし)、革車(かくしゃ)千乗、帯甲(たいこう)十
万、千里にして糧を饋(おく)るときは、すなわち内外
の費、賓客の用、膠漆(こうしつ)の材、車甲の奉(ほ
う)、日に千金を費して、しかるのちに十万の師、挙が
る。
その戦いを用(おこ)なうや久しければ、すなわち兵を
鈍(つか)らせ鋭を挫(くじ)く。
城を攻むればすなわち力屈き、久しく師を暴(さら)さ
ば、すなわち国用(こくよう)足らず。
それ兵を鈍(つか)らせ鋭を挫き、力を屈くし、貨を殫
(つ)くすときは、すなわち諸侯その弊に乗じて起こる。
智者ありといえども、そのあとを善くすることあたわず。
ゆえに兵は拙速なるを聞くも、いまだ巧の久しきを睹
(み)ざるなり。
それ兵久しくして国の利する者は、いまだこれあらざ
るなり。
ゆえにことごとく用兵の害を知らざる者は、すなわち
ことごとく用兵の利をも知ることあたわざるなり。

孫子曰、凡用兵之法、馳車千駟、革車千乘、
帶甲十萬、千里饋糧、則内外之費、賓客之用、
膠漆之材、車甲之奉、日費千金、
然後十萬之師舉矣
其用戰也、勝久則鈍兵挫鋭
攻城則力屈、久暴師則國用不足
夫鈍兵挫鋭、屈力殫貨、則諸侯乘其弊而起
雖有智者、不能善其後矣
故兵聞拙速、未睹巧之久也
夫兵久而國利者、未之有也
故不盡知用兵之害者、則不能盡知用兵之利也