2011年8月20日土曜日

形篇・勝負に集中

 戦争に慣れた者は、民意を反映したルールを作る。
 だから内乱が起きず、勝負に集中できる政治になる。
 兵法では、
 一に度合(ころあい)
 二に量知(おしはかって知る)
 三に計数(計算)
 四に称賛(ほどあい。程度)
 五に勝算(まさる)
 戦場には戦うころあいがあり、それはおしはかって
知る必要がある。おしはかって知るには計算が必要
で、計算してちょうど良い程度を知る。ちょうど良い程
度とは敵に勝る程度ということだ。
 だから勝つのは大きい器で少量を計る(余裕がある
適量)ように、敵に勝る程度を知ることであり、負ける
のは小さい器で多量を計る(あふれる過多)ようにちょ
うど良い程度を知らないからだ。(多すぎても少なすぎ
ても良くない)
 民衆を戦いにかりたてて勝つのは、溜まった水を滝
に落とすように、不満や怒りを増長し、ころあいを見て、
目的を絞って一気に放出させる。それは人数の多少
ではなく意思の統一した姿勢である。

※この文章は一般的には「多数で少数を圧倒する」と
いった解釈がされているが、数の上で劣勢で苦境に立
たされたとしても必ず負けるとは限らない。
 ベトナム戦争でアメリカが負けたのは、メディアの力
だといわれている。
 連日のように戦争の様子がニュースで流れ、それは
アメリカ人が勇敢に戦っている姿ではなく、ベトナム人
が逃げまどい、虐殺され、アメリカ兵は戦争の目的が
何なのかも分からず、ゲリラの恐怖におびえる泥沼化
した様子だった。
 アメリカは日本を大量破壊兵器で敗北させたことが、
ベトナムでも通用すると思い込んでいた。
 それが逆に弱い者いじめのように映り、アメリカ国民
の中でも批判が強くなった。
 ただ、アメリカが敗北を認めたことは、日本とは違い、
状況を冷静に見て計算し、決断する勇気があったから
だ。


善く兵を用うる者は、道を修めて法を保つ。
ゆえによく勝敗の政をなす。
兵法は、
一に曰く、度。
二に曰く、量。
三に曰く、数。
四に曰く、称。
五に曰く、勝。
地は度を生じ、度は量を生じ、量は数を生じ、数は称
を生じ、称は勝を生ず。
ゆえに勝兵は鎰(いつ)をもって銖(しゅ)を称(はか)
るがごとく、敗兵は銖をもって鎰を称るがごとし。
勝者の民を戦わしむるや、積水を千仞(せんじん)の
谿(たに)に決するがごときは、形なり。

善用兵者、修道而保法
故能爲勝敗之政
兵法、
一曰度
二曰量
三曰數
四曰稱
五曰勝
地生度、度生量、量生數、數生稱、稱生勝
故勝兵若以鎰稱銖、敗兵若以銖稱鎰
勝者之戰民也、若決積水於千仞之谿者、形也